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内部監査上_上場審査上のポイント

上場審査では以下のポイントを踏まえて、内部監査が適切に運用されているかどうかが審査されます。

上場審査における内部監査のポイント
1. 内部監査の対象
  • 会社の全部署及びその子会社
2. 内部監査の独立性の確保
  • 社長直属で、他部署から独立した専門組織を設置している。
  • 管理部門内に内部監査機能を有する場合、独立性を担保するための措置が取られている。
    • 具体的には、当該部署に対する内部監査機能は別の部署に実施させる等して、自己監査とならないよう独立性を確保している。
3. 実施頻度と計画性
  • 会社の全部署および子会社に対する監査を定期的に実施している(最低でも年1回)。
  • 監査計画書や監査調書、監査報告書等の作成・保管をしている。
4. 一般的な内部監査のフロー
  • 監査計画の作成:内部監査室立案、社長承認
  • 監査の実施:被監査部署へ通知、書類監査や実地監査、監査調書作成、監査結果評価
  • 監査報告書の作成と通知:社長への報告、改善指示の決定、通知
  • 改善措置、回答書の提出:被監査部署による対応
  • フォローアップ:改善状況の確認、次期監査計画への反映
5. 書類管理
  • 監査計画書、調書、結果通知書、回答書など、一連の書類を適切に作成・保管している。
上場審査で確認される書面内容
  • 内部監査規程の整備状況
  • 実施状況(監査計画書、監査調書、報告書及び改善指示書などの一連の書類)
  • 改善対応やフォローアップの記録

内部監査上_上場審査上のポイント

上場準備を円滑に進め、上場審査におけるリスクを最小限に抑えるため、N-2期に内部監査を開始することが適切です。具体的な理由は以下の通りです。

1. 1年以上の運用が必須
  • 一般的に内部監査は、上場審査において少なくとも1年以上の体制整備、運用が求められています。N-2期に内部監査の体制を整備し、構築を進めることで、N-1期にスムーズで安定的な運用が可能となります。これにより、申請前(N期)までに一定の実績を積むことができ、上場審査において求められる安定した運用状況を証明することができます。
2. N-1期に問題が発生した場合のリスク回避
  • N-1期に重大な改善事項が見つかると、それらの調査や対応、改善後の運用期間を確保する必要があり、上場の遅延や審査への悪影響が避けられません。このリスクを回避するため、早期(N-2期)から内部監査を実施し、問題の早期発見と改善に努める必要があります。
3. 管理体制の段階的整備・運用
  • N-2期では、上場会社と同様の管理体制の整備と運用準備に取り組み、N-1期では期首からその管理体制を本格運用します。そして、N期ではその体制を継続運用することが求められます。この流れを踏まえると、N-2期からの内部監査開始が適切であると言えます。

内部監査はアウトソースやコソースでも問題ない?

内部監査をアウトソースすること自体には問題ありません。

近年、IPO準備企業が内部監査機能を全面的に外部委託するケースが増加しており、東京証券取引所の「新規上場ガイドブック」にも下記の記載があります。

内部監査業務をアウトソーシングする場合は、通常、公正・独立性は担保されると考えられますが、アウトソーサー任せにせず、社長等が内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与しているかどうかを確認します。

(新規上場ガイドブック プライム市場編 3.上場審査の内容 P68)

このように、アウトソースすることは認められていますが、計画立案や改善プロセスにおいて経営陣の積極的な関与が求められます。また、会社として内部監査のコントロールをしっかり担保する必要があります。

具体的には、以下の点が重要です:

  • 監査計画や内容の策定
  • 改善方法の決定
  • 会社の現状や業務内容、問題意識の共有

などが挙げられます。

外部委託による独立性の確保と、経営陣の主体的な監査体制の構築が両立していることが、上場審査において重要な評価ポイントとなります。

内部監査をアウトソースやコソースするメリット

1. コストメリット
  • 採用・育成コストの削減

    内部監査専任者を新たに採用し育成する場合、人件費に加え、教育やトレーニングのコストが発生します。一方、アウトソーシングやコソーシングでは、これらのコストを大幅に削減できます。会社の規模や複雑性にもよりますが、管理人員1名分の人件費より低いコストで専門的な監査サービスが受けられます。

2. 専門性の活用
  • 高い専門知識・経験の提供

    内部監査は専門性が求められる業務であり、経験の浅い担当者が行うと要点を押さえられず、ガバナンスとしてほぼ無意味となる場合があります。外部の経験豊富な専門家であれば、的確な監査が可能であり、現場に緊張感をもたらし、ガバナンス観点からの抑止効果も期待できます。

  • 上場準備のノウハウの提供

    上場準備に関する豊富な知識とスキルを持つ専門家を内部監査に入れることで、上場審査で問題となりやすいポイントを把握した上での解決策や改善案を相談できます。これにより、上場準備を効率的かつ効果的に進めることができます。

3. 経営資源の有効活用
  • 本業への集中

    ベンチャー企業やリソースの限られた企業において、内部監査を兼任で実施すると通常業務に支障をきたすことがあります。外部に委託することで、社内リソースを本業に集中させることができ、業務効率が向上します。

  • 柔軟な体制構築

    内部監査の対象範囲やボリュームが増加する中、新たな人員を増やすことなく、柔軟かつ安定的な監査体制を構築することが可能です。

4. 公平性と独立性の確保

内部の人材では、どうしても社内事情や利害関係が監査の客観性に影響を与える場合があります。しかし、外部の専門機関に委託することで、企業内部のしがらみから切り離された視点で監査が実施され、より中立で客観的な評価が可能となります。この独立性は、監査の信頼性を高めるとともに、ガバナンスの強化にも寄与します。

結論

アウトソーシングやコソーシングは、コスト削減、専門性の活用、経営資源の有効活用、公平性と独立性の確保という観点から、内部監査体制を効率的に構築するための有力な選択肢となります。特に上場準備を進める企業においては、専門的なノウハウを外部から調達し、効率的かつ的確な監査体制を整えることが、上場成功のカギとなるでしょう。

内部監査の流れ(一年間の流れ)

内部監査は、計画から実施、改善指示、フォローアップ確認までのPDCAサイクルを1年間で回すことが理想的です。以下に具体的な流れを示します。

1. 計画
  • 時期:Q1開始前
    • 内部監査計画書の作成:監査の対象範囲や重点項目を設定。
    • 社長の承認を取得し(取締役会に報告)、監査スケジュールを確定。
2. 監査
  • 時期:Q1〜Q3
    • 通知:対象部門への事前通知や説明を実施。
    • 書類監査:関連規程や業務資料を精査し、不備や問題点を抽出。
    • 実地監査:現場を訪問し、担当者へのヒアリング及び業務プロセスや実務状況を確認。
    • 監査調書の作成:発見事項を整理し、評価結果のとりまとめ。
    • 監査結果の報告:社長及び取締役会に監査結果を報告。
3. 改善指示
  • 時期:監査後、随時
    • 監査結果通知:被監査部門に改善点や是正事項を指示。
    • 改善実施:被監査部門が改善計画を策定し対応。
4. フォローアップ
  • 時期:随時もしくはQ4
    • 改善状況の確認:被監査部門より回答書の提出。改善が適切に実施されたかを確認。必要に応じて再指導や追加資料の要求。
    • 次年度の監査計画への反映:今年度の監査を振り返り、翌年度の監査方針や重点項目を修正。

これにより、監査計画から改善まで一連のプロセスを効果的かつ効率的に実施し、内部監査の目的である適切なガバナンスの実現と維持が可能になります。

内部監査で作らなくてはいけないものとその成果物イメージ

  • 内部監査規程
  • 内部監査計画書
  • 内部監査実施通知書
  • 内部監査調書
  • 内部監査報告書
  • 内部監査改善指示書
  • 内部監査改善報告書
  • フォローアップ監査調書

監査役監査と内部監査の違い

監査役監査と内部監査の相違点
1. 目的
  • 取締役の職務執行が法律や定款に則り適切に行われているかを監査。
  • 会計監査は、計算書類が会計基準に基づき作成・表示されているかを監査。
2. 報告先
  • 株主(例: 株主総会)。
3. 重点
  • 経営レベルの問題やリスクを把握し、会社全体の運営状況を確認。
  • 例: 投資意思決定プロセスが十分なリスク評価を伴っているか。
内部監査
1. 目的
  • 企業リスクの低減を目的の一つとし、取締役の職務執行状況を調査。
2. 重点
  • 各部門の業務執行状況やガバナンス体制を精査。
  • 例: 投資意思決定プロセスの妥当性と記録の有無を確認。
監査役監査と内部監査の共通点
1. リスクの特定
  • リスクを把握し、対処する監査手続きの内容や時間を共有する。
2. 協力の必要性
  • お互いに協力することで、効率的かつ効果的な監査を実施可能。
  • 必要に応じて、共同で監査を実施。
3. 監査対象の重複
  • 例: 重要な投資意思決定が取締役会で承認されているか。
4. 情報共有の場
  • 四半期ごとに監査役、監査法人、内部監査部門で情報共有を行う(三様連携)。

このように、監査役監査と内部監査は目的や重点に違いがあるものの、リスクの特定や監査対象の重複において協力することで相互補完的な役割を果たしています。

内部監査テーマの設定

一般的な内部監査テーマの選定方法
1. リスク評価に基づくテーマ選定
  • 各部署や部門からリスクを洗い出し、影響度×発生頻度の評価を行い、組織全体の重点リスクを抽出します。これらを内部統制の強化課題としてテーマ設定し、年次進捗管理を行います(四半期や半期で評価・改善)。
2. 経営目的に基づくテーマ選定
  • 内部監査は、経営目的を支援するために行われるため、ビジネス環境や経営目標を考慮し、「何を監査すべきか」を慎重に選定する必要があります。そのためには経営陣(特に社長)のリスク認識を聴取し、十分な議論を重ねてテーマを決定します。

*テーマ設定における当社の特徴
当社では、上場審査で重点的に確認される項目(例:コンプライアンス体制、労務管理、情報セキュリティなど)を、内部監査のテーマとして優先的に設定するようにしております。
これにより、監査を通じて上場審査におけるリスクや改善点を早期に把握し、迅速な対応や改善を実現することが可能です。

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